もっとも工学部や医学部では、実験や臨床などがあるため、なかなかサイバー世界で対応しにくいが、最近は手術もサイバーで行うようになっているので、ある程度は代替されるようになるかもしれない。
となれば、リアル(教室)とサイバー(ネットワーク)の人間のイノベーティブな発想能力は、ジャズ演奏と同じだ。
オーケストラの場合は、それぞれの楽器を担当している人は基本的には楽譜どおりに演奏しなければならない。
指揮者によって演奏の仕方は多少は変わるとしても、楽譜から離れることはない。
しかしジャズでは、たとえばピアノが興に乗ってくると、サキソホンやトランペットもそれにつられ、楽譜に書いてないことも即興的に演奏することがしばしば起こる。
お互いの高揚した気持ちが互いに刺激し合うことで、思いもかけない素晴らしい演奏ができることがある。
それがジャミングだ。
つまり、お互いに精神の高揚があって、互いに刺激し合うことでいままでになかった新しいものが生まれる、というのが彼の基本的なメッセージである。
知識の伝達だけであれことをいっている。
ただし、いくらデジタル化、ネットワーク化が進むとしても、デジタル情報の収集、取出し、組立を行う際、イノベーティブなものを創造していくためには、人間の発想そのものが最後まで必要なものとして残る。
教育の分野でも、イノベーションをどうやって起こすか、新しいクリエーティブな発想はどこから出てくるのか、という問題になると、これは最後まで生身の人間に依存することになろう。
これに関しては、ジョン・ケイオー教授が数年前に書いた『ジャミング』邦訳、『知識創造の経営法則』T書店、という本の中で、こういう趣旨のば、サイバー世界で十分可能であるが、その基本的な知識をべースにして、何かを創造しようとすると、ジャミング的なプロセスが必要になる。
学校教育ではそれが大切である。
私はSの社外取締役に就任して、ジャミング的な経験をさせてもらっている。
社外取締役なので、月1回程度の取締役会に出席することが最低限の義務になっている。
この程度なら時間的にみて研究や教育に支障が生じるわけではない。
むしろ、企業の研究を手がける商学部の教授なら、Sのような日本を代表する企業のデシジョン・メイキングの現場に行って、企業のトップがどういう発想で経営しているかを見、議論に参加できることは大変貴重な経験になる。
大学で育った人間と企業の現場で育った人間との間の一種のジャミング効果が期待できるからである。
そうした経験を学生に教えたり、自分の企業研究に役立てられることも大きなプラスである。
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